2011年2月8日(火)にアメリカの統合参謀本部(Joint Chiefs of Staff)が「国家軍事戦略(National Military Strategy)」を発表しました。これは2010年に発表された「国家安全保障戦略(National Security Strategy)」と「4年ごとの国防計画見直し(QDR)」を運用するための行動指針です。今回は2004年から7年ぶりに改定されました。
要旨
- 米国は当面は経済的、軍事的に一番である。
- 財政赤字が国家安全保障上の深刻なリスク。
- アジア太平洋地域への関与の優先度が高まる。
- 陸軍と海兵隊の人員削減。
- 北朝鮮の核能力や潜在的に不安定な権力継承は、地域の安定や国際社会の核不拡散努力に悪影響を与える危険性がある。
- イランの核武装は中東の軍拡競争激化につながるおそれがある。
- 米国は核兵器なき世界を追求。だが世界に核兵器が存在する限り、米国や同盟国などへの核攻撃を抑止することが米国が保有する核兵器の基本的役割であり続ける。
- アフガン、パキスタン、アラビア、マグレブなどのアルカイダ組織を打倒する。
- テロリストや犯罪組織、海賊など非国家組織に対抗する。(NMSから「イスラム」という単語が消える)
- NATOと協力する。中東、地中海東岸、北アフリカ、バルカン半島、コーカサスの安定をはかる。
- 米国の同盟国を脅かしたり、国際公共財(グローバル・コモンズ)やサイバー空間への権利を危険にさらすいかなる国の行動にも、米国は反対のために必要な手段を講じる用意がある。
アジア
- 今後数十年間も北東アジアにおける強固な米軍戦力を堅持する。
- アメリカとアジア各国の二国間同盟は多国間同盟になりつつある。
- 自衛隊による国際平和協力活動の能力拡大を支援する。
- 日本と韓国の防衛協力を後押しする。
- 韓国は米国の不変の同盟国。北朝鮮が挑発的な脅威であり続ける中、米国は韓国に対し、揺るぎない責務を持つ。2015年まで米韓統合軍の指揮権を保持する。
- 中国との積極的、協力的、包括的な関係を追求。共通利益や相互理解、誤解解消に向けた軍事交流を深める。海賊対策や大量破壊兵器の拡散防止で協力。朝鮮半島の安定維持のため、北朝鮮に対する中国の影響力を活用する。
- 中国の軍事力拡大と、軍拡が台湾との軍事バランスに与える影響を注視。軍事力近代化の戦略的意図のほか、宇宙、サイバー空間、黄海、東シナ海、南シナ海に関する中国の攻撃的対応に懸念を持ち続けている。
- インド、ASEANとの協力を深める。
国家軍事戦略の全文は米国防総省のサイトで読めます。
2011 National Military Strategy (英語、pdf、全24ページ)
http://www.jcs.mil/content/files/2011-02/020811084800_2011_NMS_-_08_FEB_2011.pdf
New Strategy Calls for Redefined Leadership (プレスリリース)
http://www.defense.gov/news/newsarticle.aspx?id=62738